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2017-08-20

日本人の味覚と制汗剤の関係〜素麺に学ぶ「美味しい」とは〜

夏になると、流しそうめんにしたり、氷を入れて「つるる」と食べたり。
私たちに馴染みの深い、そうめんはどこから来たのか。

三輪そうめん工業協同組合によると、

そうめんの歴史を遡れば、大和の国の三輪(奈良県桜井市)で生まれた手延べそうめんに至ります。
いまから千二百余年を遡る昔のこと。日本最古の神社、三輪山の大神神社で、ご神孫・大田田根子の子孫で八二七年に三輪族の氏上にも任ぜられた狭井久佐の次男穀主朝臣が飢饉と疫病に苦しむ民の救済を祈願したところ、神の啓示を賜りました。仰せのままに肥沃な三輪の里に小麦を撒き、その実りを水車お石臼で粉に挽き、癒しの湧き水でこね延ばして糸状にしたものが、そうめんの起源と伝えられています。
そののち、三輪素麺はお伊勢参りの途中で訪れた人々を魅了し、手延べの製法も播州(兵庫県)、小豆島、島原へと伝わり、日本を代表する伝統食となりました。

とのことで、そうめんの原料がざっくり言うと小麦粉と水でできていることがわかる。
三輪には纒向川と初瀬川が流れており、水には困らない。
しかし、小麦なんてあったのか。

調べて見ると、小麦自体は、米とともに弥生時代には日本に伝わっていたらしいので、それを製粉しこねて太く編むことで「索餅(さくべい)」として大神神社の神事に用いたことがやはり始まりのようだ。

それが鎌倉・室町時代に、より高度な油を使った製麺技術が伝来したことでより細く伸ばす技術を会得し、室町時代には現代の体裁の細長い素麺となった。また、その頃には全国で素麺が作られるようになった。「素麺」の名前は、製麺技術が伝来した時に、中国から取り入れたものと思われる。福建省の福州では今でも「索麵 ソッミエン」と呼ばれているそうだ。今では特産品として色々な製麺業者が「三輪そうめん」を販売している。

しかし、疑問が残る。
一つ目は、「三輪」で作っていなくても三輪そうめんと呼ばれること。
二つ目は、そうめんを作る小麦はどこから調達するのか?と言うこと。
三つ目は、なぜ三輪そうめんが知名度の割にあまり売れていないのかということ。
四つ目は、なぜ三輪そうめんの業者が三輪そうめん以外のそうめんを作るのかと言うこと。

まずは一つ目の疑問。
「三輪そうめん」の業者は奈良の各所にある。本場の三輪以外にも、吉野にもある。他の場所にもある。一体どれが本当の三輪そうめんなのか?

答えは「ない」。

いや、正確に言うと「工業協同組合に入ってルールを守れば、どれも正解」だ。特定の老舗があるわけではなく、組合に入って作り方のルールを守ればそれは「三輪そうめん」として売れる。

老舗三輪山勝製麺の6代目勝山さんによると「三輪そうめん」であるための主な基準は、以下の通りであるらしい。

①純強力粉を使用する
②水道水で洗う
③なめ塩を使う
④油で伸ばす

ちなみに製麺に油を用いるからこそ、そうめんは麺類の中では一番ハイカロリーである。
また、小麦はグルテンが多いものを使用する。
そうしなければ、細く折れにくくならないからだ。
グルテンが多いものを使えば、髪の毛クラスの細さのそうめんだって作れる。

ただし、そこでデメリットもある。
あまり時間が経つと油が酸化して口に入れた時に「臭う」のだ。
また、口に入れた時にふわっとした小麦本来の感覚がなくなる。
だから、基本的にはコシが強く全体的にしっかりした食感となることが多い。

ちなみに、「三輪そうめんは買ってから一年ほど寝かしておいたほうがいい」という慣習があるが、それは現代においてはNGで、なるべく早く食べたほうがいいということだった。
というのも、小麦を育てるには水はけが良い土壌が望まれるのだが、昔は米(粘土質の土壌)の裏作で冬に小麦粉を作っていることが多く水はけが悪いため、質が悪く育ちにくく、タンパク質が低い小麦粉しか取れないことが多かったので、逆に油の酸化をさせることでコシを出したり味をごまかしていたからなのだ。現代では小麦の質も上がっているため、その必要はない。

そこで二つ目の疑問が湧く。
奈良って、そんなに小麦畑があったっけ????と言うことだ。

気になったので調べてみたところ、
平成27年の小麦の生産量の都道府県ランキングでは、日本全体で年間の小麦の生産量が約100万tであるのに対し、奈良県は29位の220t。

1%にも満たへんやん!

ということで、他府県からの小麦に頼っているのが現状である。
それと伴って三つ目の疑問が湧く。

生産量が少ないからなのか、売れないから生産量が少ないのか、
そうめんの国内市場に占める、三輪そうめんのシェアは1.5割しかないそうだ。
有名なところだと、揖保乃糸が4割、島原そうめんが3割で、発祥でありながらも業界での地位が下がってきている。

理由としては、やはり「三輪そうめん」の生い立ちと基準に一因があるようだ。

昔の三輪そうめんは「細ければ細いほど良い。」として、祭事や贈答用にのみ作っていたので、一つ目の疑問の答えの通り、油とグルテンが多いほどよくて、かつ見栄えと日持ちがする必要がある。現代のそうめんにおいては、味覚が優先となるためそれほど太さにこだわりはない。

その結果、三輪そうめんではないブランドのそうめんが味として望まれるようになり、売れるようになってきている。

そこで、最後の4つ目の疑問になるが、その結果「三輪そうめん」の基準に満たないが、美味しいそうめんを作る意欲がムクムクしてきたので山勝さんは独自のブランドの「一筋縄」というそうめんを開発し、押し出すこととしたそうだ。

その際に、改めて悩んだことがある。

「美味しいとは何か?」

ということだ。
そこで、京都の吉兆さんに相談をしたところ、吉兆さんが言われたことが

「美味しいとは、“甘いこと”だ。」

だった。

甘さ。単に甘いだけであれば、砂糖を足せば良いが・・・と思うが、そういう話ではない。
「甘い」ということは「素材の風味を最大限引き出していること。そこに“甘み”がある。」というのだ。

例えば、ふっくらお米を噛みしめる「甘み」。
ほかほかお芋の「甘み」。

だとすると、自分の三輪そうめんは「甘い」か?

と考えた時に、オリジナルのそうめんを作ることにしたそうだ。
それは、水道水ではなく「天然水」を用いて、なめ塩ではなく「天干塩」を用い、グルテンが低い小麦を使い(グルテンを抑えた方が素材の味がして美味しいが粘り気がない)、粘り気がない分は「細麺」にこだわらず太麺にする。さらに、日が経つと酸化して風味を劣化させる油を使わない製麺方法を開発。隠し味に「吉野葛」を用いた。それが「一筋縄」だそう。

そうすると口に入れると、購入した三輪そうめんであった少しツンとした匂いがせず、油を使っていないためにふわっとした食感が楽しめ、「甘い」のだそうだ。

結局、総合的に考えると「美味しい=甘みがある=素材の風味を生かす」というのは、口の中の嗅覚(匂い)と食感を損なわないことが決め手であることがわかった。

試しに鼻をつまんで何かを食べて見ると、味がわからない。風邪をひいていると食べ物が不味く感じるのも、このせいである。そうすると、日本料理において、繊細な味付けや体裁のものが多いのもうなづける。さらには、お風呂好きだったり、香水が苦手な人が多かったり、ファブリーズや洗濯洗剤、制汗剤の多用などの異様なまでの消臭への執着心というのも、日本食の発達から考えると納得できる。もっというと、インスタントと新鮮なもの違いは「食感と匂い」ではないかとまで思えてくる。

私は三輪そうめんも美味しいと思うし、三輪そうめんならではの食感が好きな人もいるはずだ。でも、美味しくないものもたくさん出回っている。そういった時に今後は今の話を思い出していきそうだ。

これらをつらつらと書いていたのは、私が「奈良の食文化研究会」の奈良の食文化発信人材養成講座に通っているからだ。その時の奈良女子大学の先生の食文化の話の後に、山勝さんがそうめんの話をしてくださったのが興味深く、味覚に対する感覚がガラッと変わった。山勝さんは、これから奈良県内で美味しい小麦の生産の増強に力を入れるなど、伝統を守りつつもとらわれすぎず奈良の食品のレベルをもっともっと上げていきたいとおっしゃっていたのが印象的だった。

最後に効きそうめんをして、「三輪そうめん」と山勝オリジナルの「一筋縄」を試食させてもらった。

確かに、「一筋縄」はジャンル的には食感が揖保乃糸にも似ていて、美味しい。ふわっとモチっと。さらに出汁もものすごく研究していて、秘伝の鮎だしを使っためんつゆがめちゃくちゃ美味しい。

ついでに柚子胡椒も食べたかったー。。。。
これを読んでくださった方も、もしよければぜひ試してみてくださいー。

参考:三輪山勝製麺 http://www.miwayamakatsu.co.jp/

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